クリエイタークラスと高度成長期以後の組織論
“肥り過ぎて没落した国家”と言われる日が来るのではないかとも言われるアメリカ社会、見渡す限り肥満体ばかりである。
他の地域はましと聞くがSFベイエリアだけがこうなのではないと思う。食文化が粗末なアメリカで何故ここまで肥満が増えるのか、原因は要するに手持ち無沙汰だから、つまりこの国が物質的には豊かでありながら文化的には貧しいという本質的に悲しい性質を抱えていることに依るのではないだろうか。
話は変わって高度成長期と現代社会を比較してみると、クリエイタークラスが現代社会に特に適応性が高いことの合理的な説明ができる。まず高度成長期は大規模開発が産業を牽引するので、必然的に大規模な組織が活躍する。大規模な組織というのはマクドナルドの店員を束ねる店長を束ねるマネージャーを束ねるゼネラルマネージャーを…といったピラミッド構造をとるのが効率的だったので、店長からゼネラルマネージャーまでの階層、つまり実際にハンバーガーを作る専門的知識がほとんど必要ない人達の需要が社会全体で見ると増えるということになる。いわゆる中間管理職である。
(現実に現場の店員もハンバーガー製造マニュアルに従って作っているだけなので専門的な知識はほとんど必要ないが、イメージしやすいモデルとして)
そしてやがて高度成長期は終わる。このとき残された資産として特に重要なのはインフラよりもむしろ生産のための生産財である。つまり飛行機そのものよりも飛行機を作る技術とインフラである。なぜなら大規模開発が一通り進むと、より細分化された需要を満たすための産業が発達するので、こうした生産のための生産財を使って新しい価値を生み出す小回りの効くスモールプレイヤーが活躍するための土壌がここで整備されたことになるからである。そうしてLLCや数あるインターネットショップのような産業が発達する。
これまで最大公約数的に人々の需要を見たしてきた大規模な組織は、こうした細かな需要を的確に捉えていくサービスに勝つことができない。かくして社会はスモールプレイヤーの時代となった。そしてスモールプレイヤーにとって中間管理職はあまり必要ではない。今大企業で大規模なリストラや経営悪化が起こっているのはこうした時代の必然である。そして相対的に必要とされる人材の多くを占めるようになるのがコンピュータ、会計、物質化学、バイオテクノロジー、グラフィックデザイン、メカトロニクス、ジャーナリズム、自然エネルギー..のような専門分野に精通し、直接的に価値を生み出すことのできるクリエイタークラスである。彼らは組織ではなくプロジェクトを中心にして活動する。このとき組織の形態としてより理に適うのは従来のピラミッド型ではなくクラウド(雲)型である。