書評『The Lean Startup』

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あなたのプロダクトにある問題が起きていることに、あなたは気づく。そこであなたはこう考える。

Can we built a solution for that problem?

答えはYesだ。さて、この問題解決に着手しよう。。。

知っての通り起業家のためのバイブルとして各国で圧倒的に支持される本書は日本でも邦訳が出るらしいが原著を先々月頃から読んでいたので、一足先に書評を書いておこうと思う。と、書ければベストだったのだがもう出ているらしい。
原著で読む場合はAudible.comで著者Eric Ries本人が読んでいる朗読が手に入るのでこちらもお勧め。

要旨としてはスタートアップビジネスにとって、早めにMinimum Viable Productと呼ばれる最低限の必要機能を備えたプロトタイプを世に出し、サービスの作り手の想像の範疇で試行錯誤するのでなくユーザーが真に望むサービスへの改良をフィードバックループの中から探れというもの。Lean methodからすれば冒頭に書いた問題解決のプロセスからは3つの問いが抜けている。

1.Do consumers recognize that they have the problem you are trying to solve?
2.If there was a solution,would they buy it?
3.Would they buy it from us?
4.Can we built a solution for that problem?

つまり限りあるリソースの中で着手する前に顧客が望んでいるか。
言うはたやすいが、一度でもプロダクトを世に問わせたことのある人であれば、行うに難い場面をいくらか想像できるのではないか。可愛い我が子のデビューはスティーブジョブズのプレゼンテーションのように完全に整えられた状態で飾らせたいと思うのが親の常であるだろうし、本書にも書かれているが皮肉なことにユーザー数も収益も少しあるより”ゼロ”の方が人は可能性を感じるので、作り手含む関係者各位の期待を裏切るまいという心理が働けば完成品への拘りが尚更生まれる。
膨大なコストをかけて完成させたプロダクトや新機能が蓋を開けてみたらユーザーの望むものではなかったという著者のIMVUでの苦い経験(実際には投資家や従業員からのプレッシャーを考えれば相当な苦難だったに違いない)から語られる教訓には相応の説得力が込められている。

アントレプレナーが直面する各フェーズに沿って本書は進行していく。米国一のオンラインシューズストアでAmazonに好条件で買収されたZaposやHP、Facebook、Dropboxなどシリコンバレーのスター企業がフレームワークのテストケースとして次々と挙げられ、Zaposについてはトニー・シェイ『ザッポス伝説』がこれまた面白いのだが、アメリカ最大のオンラインシューズストアもはじめは小さな実験からスタートしている。オンラインで靴を買う需要が本当にあるのか試すために、ネットでオーダーが入ると靴屋から商品を全額で買い取り郵送で送るという地道な作業を繰り返した。
本書ではこの過程を著者が説くフレームワークの一部を当てはめ、それがどうプロダクト改善のためのプロセスに有用だったかを解説している。

本書の何が新しいのか。全て想像できる範囲内にあるという意味においては正直これといって新しいことは何もない。ただあまりに有名になった数々の成功神話と固定観念と、そして創造者であるがゆえに持つ衝動から離れ、泥臭くも賢明な創造の舞台に上がる前の手人文字としてこれ以上のものはないだろう。NIKEのキャッチコピー”Just Do It”式のギャンブルでなく再現可能な科学として抽象化できる教訓はこれが限度ではないか。私たちが知っている美しいプロダクトはそのプロダクト程美しくないプロセスで生まれている。

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